執筆・監修:あいおい歯科こども歯科クリニック 院長 畑 周一郎
「指しゃぶりがなかなかやめられない」
「気づくと頬杖をついている」
お子さまのこうしたクセは、多くのご家庭で見られるものです。ただ、歯科の分野では、毎日くり返される小さな力が歯やあごに加わり続けることで、歯並びや噛み合わせに影響する場合があると考えられています。こうした歯並びに関わるクセは「口腔習癖(こうくうしゅうへき)」と呼ばれます。
一方で、クセには安心感を得たり、気持ちを切り替えたりする役割もあり、無理にやめさせることが良いとは限りません。
この記事では、高岡市のあいおい歯科こども歯科クリニック院長が、歯並びに影響しやすい7つの習慣、それぞれのクセが歯並びに与える影響、年齢別の考え方、叱らずに見直すためのコツをわかりやすく解説します。
📑 目次
目次
1. 毎日の「クセ」が歯並びに影響するのはなぜ?
弱い力でも「長く・くり返し」かかることがポイント
歯は、骨の中にしっかり埋まっているように見えますが、実は弱い力でも長い時間かかり続けると、少しずつ動く性質があります。矯正治療で歯が動くのも、この性質を利用したものです。
指しゃぶりや頬杖は、一回ごとの力は小さくても、毎日何時間も、何か月・何年とくり返されることがあります。特にお子さまの時期は、あごの骨が成長している途中のため、こうした力の影響を受けやすいと考えられています。
口腔習癖(こうくうしゅうへき)とは
歯並びや噛み合わせ、お口の機能に影響する可能性のあるクセを、まとめて「口腔習癖」と呼びます。指しゃぶりのように目に見えやすいものもあれば、飲み込むときの舌の動きのように、ご家庭では気づきにくいものもあります。
クセの影響の出方は、「どのくらいの時間」「どのくらいの期間」「どのくらいの強さ」で続いているかによって変わり、個人差があります。同じクセがあっても、歯並びにほとんど影響が見られないお子さまもいます。
2. 歯並びに影響しやすい7つの習慣【チェック表】
まずは、お子さまにどんなクセがあるかを確認してみましょう。当てはまるものがあっても、すぐに歯並びが悪くなるわけではありません。「どんなクセが、どんな場面で出ているか」を知ることが見直しの第一歩です。
| 習慣 | こんな様子はありませんか? |
|---|---|
| ① 指しゃぶり・おしゃぶり | 寝る前やテレビを見ているときに指をくわえている/指にたこができている |
| ② 舌を前に出す | 飲み込むときや話すときに、上下の歯の間から舌が見える |
| ③ 唇を噛む・吸う | 下唇を上の前歯で噛んでいる/唇を吸い込んでいる |
| ④ 爪噛み・物を噛む | 爪や鉛筆、服の袖、タオルなどをよく噛んでいる |
| ⑤ 頬杖 | 勉強中やテレビを見るときに、いつも同じ側で頬杖をついている |
| ⑥ うつぶせ寝・横向き寝 | うつぶせや、いつも同じ向きで顔を下にして寝ている |
| ⑦ お口ぽかん | リラックスしているとき、唇が閉じずに口が開いている |
⑦のお口ぽかん(口呼吸)については、別の記事で詳しくご紹介しています。
👉 関連記事:口呼吸・お口ぽかんは歯並びのサイン?|家庭でできる10項目チェックと放置するリスク
💡 ポイント:クセは1つだけとは限りません。指しゃぶりと舌のクセ、頬杖とお口ぽかんのように、いくつかのクセが重なっていることもよくあります。
3. 指しゃぶり・おしゃぶりはいつまで大丈夫?
保護者の方から特に多いのが、「指しゃぶりはいつまで様子を見ていいの?」というご質問です。指しゃぶりは、赤ちゃんの時期には自然な行動で、安心感を得る役割もあります。大切なのは、年齢に応じて向き合い方を変えていくことです。
年齢別の考え方
| 年齢の目安 | 考え方 |
|---|---|
| 〜3歳頃 | 成長の過程で見られる自然な行動とされ、無理にやめさせる必要は少ないと考えられています。外遊びや手を使う遊びを増やし、自然に減っていくのを見守る時期です。 |
| 4〜5歳頃 | この時期を過ぎても頻繁に続く場合、歯並びへの影響が出やすくなるといわれています。お子さまと話し合いながら、少しずつ卒業を目指していく時期です。 |
| 就学後〜 | 永久歯への生え変わりが始まる時期です。続いている場合は、歯並びの状態も含めて、一度歯科医院で確認することをおすすめします。 |
おしゃぶりについては、奥歯が生えそろう2歳半頃までに卒業するのがひとつの目安とする考え方があります。いずれも成長には個人差があるため、目安としてお考えください。
指しゃぶりと関係があるといわれる歯並び
- 開咬(かいこう):指が入っていた部分に隙間ができ、奥歯を噛んでも前歯が閉じない状態
- 出っ歯(上顎前突):指で上の前歯が前に押され、下の前歯が内側に押される状態
- 上あごが狭くなる:吸う力で頬の筋肉が内側に働き、上あごの幅が狭くなる場合があります
また、指しゃぶりで前歯に隙間ができると、その隙間に舌を入れるクセ(次の章でご説明する舌のクセ)につながることもあると考えられています。
4. 舌のクセ(舌突出癖)と歯並び
飲み込むときや話すときに、舌で前歯を押したり、上下の歯の間から舌を出したりするクセを「舌突出癖(ぜつとっしゅつへき)」と呼びます。ご家庭では気づきにくいクセのひとつです。
飲み込むとき・話すときのサイン
- 飲み物を飲み込むとき、舌の先が前歯の間から見える
- ぼーっとしているとき、舌が前歯の裏や間に触れている
- 食べるときに口元に力が入ったり、クチャクチャと音がしたりする
本来、飲み込むときの舌は上あごに押し当てられるように動くとされています。舌が前に出るクセがあると、前歯が押されて前に出たり、上下の前歯の間に隙間ができたり(開咬)、すきっ歯になったりする場合があると考えられています。
発音への影響
舌のクセがあると、「サ行」「タ行」などの発音が舌足らずに聞こえることがあります。発音は年齢とともに整っていく部分も大きいため、気になる場合は、歯並びと合わせて確認してみるとよいでしょう。
舌のクセは、意識するだけでは直しにくいことが多いため、舌の正しい位置や動かし方をトレーニングで身につけていく方法があります(第9章でご紹介します)。
5. 唇を噛む・爪を噛むクセ
下唇を噛むクセと前歯の位置
下唇を上の前歯の裏側に挟み込むクセ(咬唇癖:こうしんへき)があると、上の前歯は前へ、下の前歯は内側へ押される力がかかり、出っ歯が強くなる場合があります。すでに上の前歯が出ていると、下唇が前歯の裏に入りやすくなるため、クセと歯並びがお互いに影響し合うこともあります。
唇を吸い込むクセや、唇をなめるクセも同様に、口元のバランスに影響することがあります。唇がいつも荒れている場合は、こうしたクセがないか観察してみてください。
爪噛み・物を噛むクセ
爪や鉛筆、服の袖、タオルなどをくり返し噛むクセは、前歯の位置がずれたり、歯の先がすり減ったりする原因になる場合があります。また、手や物についた汚れがお口に入りやすいため、衛生面からも見直したい習慣です。
爪噛みは、緊張や退屈、不安などの気持ちが関係していることも多いといわれています。クセそのものを注意するより、どんなときに出るのかに目を向けることが大切です。
6. 頬杖・寝る姿勢と歯並び
片側に力がかかり続けることの影響
頬杖をつくと、頭の重さの一部が手を通してあごや歯にかかります。いつも同じ側で頬杖をついていると、片側の歯が内側に傾いたり、あごが左右にずれたりする一因になる場合があると考えられています。
頬杖は、机や椅子の高さが合っていないときや、集中が切れてきたときに出やすいクセです。勉強やゲームをする環境を見直すことも、クセを減らすきっかけになります。
寝る姿勢のポイント
うつぶせ寝や、いつも同じ向きで顔を下にする横向き寝も、寝ている間の長い時間、あごや歯に一方向から力がかかる姿勢です。寝姿勢は自分ではコントロールしにくいものですが、次のような工夫が考えられます。
- 枕の高さを見直す:高すぎる・低すぎる枕は寝返りや寝姿勢に影響することがあります
- 寝る前の過ごし方:寝る直前までうつぶせでタブレットを見る習慣は控えめに
- 無理に直さない:寝ている間に体勢を何度も直すと睡眠の妨げになるため、できる範囲で
7. 叱らずに見直す!ご家庭での向き合い方
クセを見直すうえでいちばん大切なのは、叱らないことです。強く注意されると、お子さまは隠れてクセを続けたり、不安からかえってクセが増えたりすることがあります。次のような工夫を、お子さまのペースで取り入れてみてください。
クセが出る場面を観察する
「寝る前」「テレビを見ているとき」「宿題中」など、クセが出やすい場面を1週間ほど観察してみましょう。場面が分かると、その時間の過ごし方を少し変えるという具体的な対策を立てやすくなります。
手持ちぶさたを減らす工夫
- 寝る前:手をつないだり、絵本を一緒に持ったりして、指が口に向かう時間を減らす
- テレビや動画の時間:ぬいぐるみやボールなど、手で触れるものを用意する
- 宿題・勉強中:机と椅子の高さを合わせ、足が床や台につく姿勢を整える
ほめる・見える化する
カレンダーにシールを貼るなど、できた日を目に見える形にすると、お子さま自身のやる気につながりやすくなります。「やめなさい」ではなく、「今日はできたね」と、できたことに目を向けて声をかけてあげてください。
4〜5歳以上のお子さまであれば、「どうして指しゃぶりをやめたほうがいいのか」を、絵本などを使ってお子さま自身が納得できるように伝えることも、自分から取り組むきっかけになることがあります。
やめられない時期もあると知っておく
引っ越しや入園・入学、きょうだいの誕生など、環境が変わる時期には、クセが一時的に増えることがあります。そうした時期は無理をせず、お子さまの気持ちが落ち着くのを待つことも大切です。
また、よく噛んで食べることは、お口まわりの筋肉を育てる大切な機会です。食事の工夫については、こちらの記事もご覧ください。
👉 関連記事:歯並びを守る子どもの食習慣|噛む力・姿勢・栄養の3つの視点
8. こんなときは歯科医院へ相談を
ご家庭での工夫を続けても気になる場合や、次のような様子が見られる場合は、一度歯科医院でお口の状態を確認することをおすすめします。
- 4〜5歳を過ぎても指しゃぶりが頻繁に続いている
- 歯並びの変化に気づいた:前歯が出てきた、奥歯で噛んでも前歯が閉じない、隙間が気になるなど
- 飲み込むときや話すときに舌が前に出る
- いくつかのクセが重なっている
- やめさせ方に迷っている:ご家庭だけで抱え込まなくて大丈夫です
歯科医院では、歯並びや噛み合わせへの影響が出ているかどうかを確認したうえで、ご家庭での取り組みで様子を見るのか、トレーニングや治療を検討するのかを、ご家族と一緒に考えていきます。
👉 関連ページ:あいおい歯科の小児矯正歯科について
9. あいおい歯科のクセへの取り組み
あいおい歯科こども歯科クリニックでは、歯並びを「歯の位置」だけでなく、舌の位置・飲み込み方・呼吸といったお口の機能や、毎日の習慣からも考えることを大切にしています。
MFT(口腔筋機能療法)
MFTは、舌の位置・飲み込み方・呼吸・発音などを整えるための、お口まわりの筋肉のトレーニングです。舌のクセのように、意識するだけでは直しにくいクセに対して、正しい動かし方を身につけていくことを目指します。お子さまの状態に合わせて、ご家庭で続けやすい内容をお伝えしています。
マイオブレースによる予防矯正
マイオブレースは、取り外し式のマウスピース型装置とMFTを組み合わせ、口呼吸や飲み込みのクセなど、歯並びに影響する習慣の改善を目指す治療です。装置は日中1時間程度と就寝中に使用します。
マイオブレースについての大切なお知らせ
- 費用:自由診療(保険適用外)です。費用の詳細は無料矯正相談でご案内しています。
- 期間:お子さまの状態により、数ヶ月から数年となる場合があります。
- 主なリスク・注意点:装置の使用やトレーニングにはお子さま自身の協力と継続が必要です。効果には個人差があり、症状や骨格によっては他の矯正治療が必要になる場合があります。装置に慣れるまで違和感が出ることがあります。
👉 関連記事:歯並びが悪くなる”根本原因”にアプローチ|マイオブレースによる予防矯正とは?
お子さまとご家族に寄り添う環境
- 保育士在籍:お子さまの気持ちに寄り添いながら、診療の時間を過ごせるようサポートしています
- 小児矯正専用のアクティビティルーム:トレーニングを楽しみながら続けられる空間をご用意しています
- TC(トリートメントコーディネーター)在籍:治療についてのご説明や、保護者の方のご相談をサポートします
- 栄養士在籍:噛む力を育てる食事について、ご家庭での工夫をご提案しています
- 個室カウンセリング・キッズスペース:保護者の方が落ち着いてお話しいただける環境です
- イオンモール高岡内・土日診療:お買い物のついでや週末にも通いやすい立地です
10. 保護者からよくあるご質問
Q1. 指しゃぶりは寝ているときだけです。それでも影響はありますか?
A. 寝ている間は長い時間続くことがあるため、時間の長さによっては歯並びに影響する場合があります。眠りについた後に指が口から外れているようであれば、影響は比較的少ないと考えられます。寝入りばなの様子と、夜中の様子を一度確認してみてください。
Q2. 無理にやめさせると、心に影響しませんか?
A. 指しゃぶりには安心感を得る役割もあるため、強く叱ったり、無理にやめさせたりすることはおすすめしません。年齢に応じて、お子さま自身が納得できるように伝え、できたことをほめながら少しずつ進めていくことが大切です。
Q3. おしゃぶりはいつまで使っていいですか?
A. 奥歯が生えそろう2歳半頃までに卒業するのがひとつの目安とする考え方があります。使う場面を寝るときだけにするなど、少しずつ使う時間を減らしていく方法もあります。
Q4. きょうだいで同じように指しゃぶりをしていたのに、歯並びに差があるのはなぜですか?
A. クセの影響は、続けている時間や期間、力の強さに加えて、もともとのあごの大きさや骨格など多くの要因によって変わります。そのため、同じクセでも影響の出方には個人差があります。
Q5. クセがなくなれば、歯並びは自然に戻りますか?
A. 年齢や歯並びの状態によっては、クセがなくなった後に改善が見られる場合もあります。ただし、自然に整うとは限らず、舌のクセなど別のクセが残っていることもあります。クセを卒業した後も、一度お口の状態を確認することをおすすめします。
11. まとめ|クセは「叱る」より「気づいて、一緒に見直す」
指しゃぶりや舌のクセ、頬杖などの毎日の習慣は、小さな力でも長くくり返されることで、歯並びや噛み合わせに影響する場合があると考えられています。一方で、クセには安心感などの役割もあり、年齢やお子さまの気持ちに合わせて向き合うことが大切です。
まずはチェック表で、どんなクセが、どんな場面で出ているかを確認してみてください。ご家庭での見直し方に迷ったときや、歯並びの変化が気になるときは、どうぞお気軽にあいおい歯科こども歯科クリニックへご相談ください。お子さまのペースを大切にしながら、ご家族と一緒に考えていきます。
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13. 執筆者紹介
― この記事の執筆・監修 ―
畑 周一郎(はた しゅういちろう)
あいおい歯科こども歯科クリニック 院長
大学卒業後、病院の歯科口腔外科や地域の歯科医院での勤務を経て、2017年より当院の院長を務めています。お子さまが歯医者さんを好きになり、大人になっても健康なお口で過ごせるように、ご家族と一緒に考える診療を心がけています。
指しゃぶりや頬杖などのクセは、どのご家庭でも見られる身近なものです。だからこそ、「やめさせなきゃ」と保護者の方が一人で悩みを抱え込んでしまうことも少なくありません。クセの背景にあるお子さまの気持ちも大切にしながら、歯並びへの影響とのバランスを一緒に考えていきたいと思っています。
「このクセ、このままで大丈夫かな?」と気になったら、それが相談のタイミングです。無理に治療をおすすめすることはありませんので、どうぞお気軽にお声がけください。
【経歴】
- 2009年 愛知学院大学歯学部 卒業
- 2009年 愛知県済生会病院 歯科口腔外科 勤務
- 2011年 愛知県東海市の歯科医院 勤務
- 2017年 あいおい歯科こども歯科クリニック 院長就任


